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貧乏神の能力
「あのう……」
我ながらしおらしい声が出たと月は思った。
自分の身体を見られてしまっただろうという恥ずかしさが浮き上がって、まともに乾太郎の様子をうかがえなかったのだ。
だが、それはどうやら乾太郎のほうも同じ様子だった。
「あ、はい」
さっきまでは声をかけると、きちんとこちらを見て返事をしてくれていたのに、今度は俯いて床を見つめていた。
「寝ようかと思うんだけど」
「ああ、うん。そっか。そうだね。もう零時だしなぁ、ハハ」
「ええとさ……、私あっちの洋間を寝室にするつもりだったんだけど」
「OK、分かってるよ。僕はこのリビングで眠らせてもらうから」
「……素朴な疑問なんだけど、布団敷いて寝るの?」
「その通りだよ。自分の分の衣類や布団は、そっちのクロゼットに入れておくから」
「い、いつの間に……」
ともあれ少しだけほっとした。もしや一緒のベッドで眠るとか、安直な展開になるのかと思っていたのだ。それだけは絶対に無理だと思ったので、月は一安心だった。
「じゃあ、私寝るわ。おやすみ」
「ああ、おやすみ。キララちゃん」
「……まぁいいか、おやすみ。……かんたろ」
「あ……うん、おやすみ!!」
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