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「お、おじゃまします」
「いらっしゃい」
ドキドキしながら部屋の中に入ると、座椅子に座り、パソコンを眺めているあやかしが声をかけてくれた。
見た目は銀行員みたいに、パリっと決めている中年の男性だったが、座椅子の上で胡坐をかいているので、なんだかギャップがあった。
「あやかし事務所にようこそ、窓口の山田です。あ、鴉天狗やってます」
「は、はい。よろしくお願いします。空亡といいます。先日生まれたばかりです」
「新しいあやかしだね、歓迎しよう。あやかし協会は我ら鴉天狗が運営しているマヨヒガの自治体だ。ここで手形を発行すれば君も立派なあやかしとして認められる」
「どうしたら、認められますか!」
「審査は特にないんだよ。君がどんなあやかしとして、人々に口伝されているのかを自己紹介すればいい」
「わ、わかりました!」
空亡は、深呼吸をして自分を落ち着かせると、背筋を伸ばして、自己紹介を始めた。
「あたしは、空亡と呼ばれているあやかしです。百鬼夜行の最後に描かれている夜明けの太陽が、あたしです」
「なんだって?」
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