最強の妖怪『空亡』

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「百鬼夜行の最後に描かれている太陽は夜明けとともにあやかしが去ることを示して描かれてます。でも、その太陽も実はあやかしで、全てのあやかしを退ける最強のあやかし……それが空亡だとして誕生したのが、あたしです」  空亡が誕生した理由、どんな存在なのかを自己紹介して見せた。  背丈の小さな少女にしか見えないが、口伝されるあやかしとしての内容は、非常に強力な存在として広まっている。 「百鬼夜行の夜明けが、あやかし化した存在だってことか」 「そう、みたいです」 「なんとも面白い話だねえ。人間ってのは色々と空想が出来て面白い」 「あ、あの……ほ、ほんとにこんな紹介でいいんですか?」  後から生まれたあやかしである空亡は、自分の大それた自己紹介に先輩のあやかしが気分を害さないかと不安になったが、鴉天狗の山田はそのままキーボードをカチカチ言わせて、何やらデータを打ち込むとうんうんと頷いていた。 「うん、なるほど、確かに。空亡。登録完了したよ。これできみも、ここマヨヒガの仲間だ。手形をあげるからこっちにおいで」  そう言って、どっこいしょと、座椅子から立ち上がると、事務所の奥に空亡を案内した。  空亡は、ほっとして山田の後に続くと、書類にサインを書くための席に座らされて、お役所仕事とばかりに署名と判を何枚もの紙に書かされることになった。     
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