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これからどうやって暮らしていこうかと空亡は色々な想像を膨らませて、口角を上げていく。
周りにはどんなあやかしが暮らしていて、どんな仕事をしているのだろう。
それを見て回って、自分も何ができるのか色々と考えてみよう。きっと沢山悩むだろうけど、それもなんだかすごく楽しくなりそうだ。
まだまだあやかしとして、駆け出しもいいところだが、いつかはあの貧乏神の乾太郎のように、優しくも立派なあやかしになりたいなと、幼い心を、少しだけおませに火照らせて、貧乏神の笑顔を思い出していた。
◆◇◆◇◆
同じ頃、勘解由小路乾太郎は、人の願いを聞き届け、貧乏神としての仕事を行っていた。
一人の女性が、神社で手を合わせ祈っていたのを聞き入れたのだ。
その願いは、ギャンブルにはまる彼の目を覚ましてやって欲しいという願いだった。
疫病神が不幸をまき散らすことは誤解であるということは、あやかしの中では当然の話だが、人間の中では、やはり疫病神は不幸を招くと実しやかに言い伝えられている。
貧乏神とて同様だった。貧乏神は憑りついた人を貧乏にするために憑りついているのではない。
金銭は人の努力のバロメーターであるが、努力せずして財産を獲得しようとするものに教訓を伝えるべく、貧乏神は人に憑りつく。
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