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乾太郎は努力する者を愛し、それを怠る者を戒めることこそ、貧乏神の流儀だとしていた。
女性の祈りの男性は、重度のパチスロ依存症だった。かつて一度、パチスロで莫大な儲けを経験してからドはまりしてしまったらしい。
今や、開店と共にスロット台に付き、閉店と共にスロット台から尻を上げるという毎日であった。
会社も辞め、彼女から金をせびり、それをスロットにつぎ込むという自堕落は、乾太郎を呆れさせた。貧乏神という仕事柄、こういった人間をよく見る乾太郎は、面倒なルーティンワークに打ち込む死んだ目をしたサラリーマンみたいに、うんざりした表情を浮かべていた。
男に憑りつき、パチスロでは一切当たらないように、貧乏神の能力を発揮させると、男は見る見るうちに不機嫌になる。
設定がおかしいだとか、店側のインチキだと、喚き散らし、それでもだらだらと丸一日、スロット台を行ったり来たりと繰り返した。
(醜いな)
はっきりとそう思った。人間は多種多様な文化を形成し、人々を沸かせるが、このパチンコスロットは明確に人を堕落させる文化だと言い切れる。
ここには今朝出逢ったような生まれたばかりのあやかしみたいに、純粋な目をしている人間は、一人としていない。
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