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だらりと体を投げすように椅子に座り、ぼんやりした目で、機械的にボタンを押す。激しく光るライトと、脳を異常にさせる爆音で、人々がゆっくりと腐敗していくのが目に見えていた。
結局その日、男に憑りついた乾太郎のお陰で、その男は一銭も稼ぐことなく帰ることになった。
それから暫く、男に憑りつき、男が金を溶かしていくのを見続けて行く毎日が繰り返された。
結局のところ、男のギャンブル癖を治してほしいと願った女性は、その男に愛想をつかして別れた。
別にそれは乾太郎にとってどうでもいい話だった。乾太郎が聞き入れた願いは、彼との幸せな結末という願いではない。
彼のギャンブル癖を治してほしいという願いでしかないのだ。
女性と別れた男は、金欠のために借金に手を出した。それもきちんとした融資をする銀行や会社ではない。闇金である。
乾太郎は、その金で何かしら仕事を初めて悔い改めるのならば、相応の幸福を用意してもいいと考えていた。
しかしながら、男はその闇金で入手した金さえも、ギャンブルに使用したのだ。
パチスロでダメならば、競輪だ、競馬だと、まるで反省も成長も見えなかった。
「ちきしょうっ、なんでこんなについてねーンだよッ」
荒々しい声で、八つ当たりに壁を蹴り、汚らしく唾を吐く。
(努力をしないからだ)
醜いものを見下して、乾太郎は独り言ちた。
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