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「し、静かにしてください! この問題は非情にデリケートなんです!」
「……きちんと説明してくれ」
「空亡の素性は、百鬼夜行の最後尾に描かれた太陽が、あやかしであるという説から生まれた物でした」
「百鬼夜行の最後尾……夜明けの太陽か」
「はい、百鬼夜行が逃げ出す夜明け。それさえもあやかしとして描かれていたとしたら、それは最強の妖怪であると広まった話から生まれたのが、空亡です」
「最強の、妖怪……あの子が?」
どう見ても、あどけない無垢な少女にしかみえなかった。強大なパワーを秘めているような気配もなかったように思う。しかし、人の世に広まった空亡の話題はそういうものだったのだろう。
「最強の妖怪だなんて、ぽっと出て来た新参者が獲得していいものではないとして、マヨヒガ中も困惑しはじめました。そして、その話が酒呑童子様の耳に入って……」
「莫迦な……!」
乾太郎は空亡の純粋な笑顔を思い出し、あの少女が酒呑童子の四十万に目を付けられた事実に、驚愕するばかりだった。
「いくら酒呑童子さまとは言え、最強などと戯れに過ぎないと判断されるだろう」
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