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「……それがそうでもなく……。空亡を捕まえた酒呑童子様は、その後、何をされたのか分からないのですが、空亡を本当に危険なあやかしだと判断したようなのです」
「まさか……本当に最強の力を持っていたとでも?」
「分かりませんが……笑ってすますことができないと四十万さまは判断されました。空亡は、少なくとも酒呑童子さまにとって脅威になったようだと、専らの噂が広まっています」
それでか――と、乾太郎はマヨヒガの奇妙な気配に納得した。
誰もが空亡の話題を避け、酒呑童子を恐れたからこそ、口を閉ざしているのだ。
「結局、その空亡の『最強の妖怪』説を揉みつぶすことで、空亡はあやかしではないとして、マヨヒガから迫害されました」
ぎり、と乾太郎の奥歯が軋んだ。
沸々と、煮えたぎる怒りが心を塗りつぶしていると分かった。
あのように純粋な存在を迫害したという事実、酒呑童子が空亡のあやかし説を握りつぶしたという理不尽さ。
「空亡の話はそもそも『誤解』だったと広く人間社会に広めさせ、あやかしとしての存在を希薄にさせたのが四十万さまだと、噂が広まっています」
「誤解だって?」
「なんでも、空亡は、とあるテレビゲームのキャラクターから生まれたのだとか」
「テレビ……ゲーム?」
あまり馴染みのないテレビゲームという話に、乾太郎はぱちりと瞬きをした。
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