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酒呑童子もまた、乾太郎と一緒で、空亡の件に関与している可能性が高い。しかし、その真意はまるで分らない。
月は腹をくくって、立ち上がると、四十万飛燕に面会することを決めた。
「どういうつもりなのか、問い詰めてやる」
「る、月さん……無茶はしないほうが……」
「奈和さんは、気絶した私の傍にずっといてくれたの?」
「は、はい」
恐れおののいている奈和は、ずっと青ざめた表情だった。この場にいることが本当に恐ろしいのだろう。酒呑童子という存在がいつ牙を剥くのか分からない。
畏怖の対象である鬼の寝所に居ることは、まだまだ生まれたばかりのあやかしにとって、強大な圧力をかけることになるだろう。
それでも、奈和は、月の傍に居続けてくれていたのだろう。
「ここからは、私だけで対応するから、奈和さんは帰らせる様に私から言ってあげる」
「い、いえ。最後まで傍に居させてください」
「どうして? 今回の事は、奈和さんには無関係なのよ? 私が身勝手にここに来たがっただけなんだし」
「力になりたいと申し出たのは私です。どうか、最後まで、お手伝いをさせてください」
怯えているのは伝わっていた。それでも、奈和は、勇気を振り絞り、月と共に居たいと言ってくれた。
それは、純粋に月を鼓舞した。
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