鬼の求婚

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 月はその名を口にした。ずきんとまた頭が痛んだが、顔をしかめるだけで、しっかりと飛燕に向き合い続ける。 「思い出したか?」  にたりと嗤った飛燕は、月を鬼の瞳でねめつけた。 「私が、空亡に関係があるということは、思い出したけど、何もかもを思い出したわけじゃない。あんたが私に百鬼夜行の調査を依頼したのは、空亡に関して私がどんな反応をするかを確認するためだったんでしょ?」 「ああ、そうだ。だから言ったろ。絵巻はどうでもいいってな」 「お願い。教えてほしいの。空亡のこと」  月のその言葉に、飛燕はギラギラとした目を面白そうに眇め、嬉々として、そして、鬼気として口の端を吊り上げた。 「お願いってことはよォ、この俺に縋って来てるってわけだな?」 「――何が言いたいの?」 「俺は空亡の真実を全て語ることができるだろうぜ。お前はそれを聞きたいんだろう? だったら、情報料として何か差し出してもらわなくちゃならねェ」 「情報料……? お金を取るの?」 「金なんざ腐るほどあるんだよ。見てみろこの周りのお宝の山を。鬼ヶ島って感じだろ」  ガハハと豪快な笑いを飛ばす飛燕だったが、奈和はその声にびくりと震え、月は怪訝な顔をした。 「あんた、私に空亡のこと、教えたいの? 教えたくないの?」 「ククッ、なぁ、お前名前なんてったっけ?」     
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