鬼の求婚

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 はだけた着物の胸元は、逞しい胸板を見せ、あやかしの王として君臨する尊大さをオーラにして纏っている飛燕は、確かに男の魅惑をチラつかせていたが、月はすぐさま首を横に振る。 「頷くわけがないでしょ。私、あんたのこと、嫌いだもん」 「だったら、空亡の話はナシだな」 「……なんで私があんたの嫁になる必要があるの?」 「お前が俺の物になれば、何もかもうまくいくってだけだ」 「意味が分かんない」  大きな飛燕が一歩、月へと歩み寄った。  月は反射的に、奈和を庇うように前に出た。  その月の行動に、飛燕の表情がぴくりと反応した。そして、不敵な笑みを浮かべて、また一歩、二歩と月に歩み寄る。 「な、なによ」 「嫌がる女を無理やりモノにするのも、オツってもんだぜ」 「月さんっ」 「黙りなァ!」  怒号が飛び、それで奈和は呼吸すら止めて、委縮した。 「酒呑童子の伝説は調べたのか? インベスティゲーションさんよぉ?」  月ににじり寄り、ほとんど抱きすくめるような体勢で、月の耳元で飛燕は挑発するように言った。 「酒呑童子は、酒好きで、都の姫を攫っては酒池肉林に興じた」 「分かってるじゃねえか」  妖しい声で耳元で囁く飛燕は、今まさに、月をかつての姫のように囲うつもりなのだと暗に言っていた。 「……」     
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