鬼の求婚

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「てめぇは出ていけ。この話は月だけにする」 「で、でも……」  奈和は、このまま月を残してこの部屋から出ていくことを不安に思ったのだろう。また飛燕が月を襲おうと迫ることすらあるだろうと考えたのだ。 「奈和さん、もう大丈夫だよ。先に帰ってて。私も直ぐに帰るから」  にこりと奈和に心配いらないと声をかけた。月からそう言われてしまっては、奈和はもうここには居座ることができなかった。 「分かりました。先に戻っております」 「うん、本当にありがと」  奈和は深く頭を垂れ、酒呑童子の部屋から出て行った。  部屋には、月と飛燕だけが残されて、夕日の赤もすっかりと落ち、今は夜の帳が下りている。 「もう一度聞くぞ、覚悟は……」 「くどい」 「フン、分かったよ」  焦らされると、余計に怖くなるので、月は飛燕の言葉に覆いかぶせ、その場に正座で腰を落とした。  腹は決めている。  飛燕も同様に、どっかりと座り、向き合った。  奇しくも二人は、初めて対面した時と同じような状態で、視線を交えた。 「色々と説明をしなくちゃならねェが、まず最初に言っとくぜ」 「……」 「空亡ってのは、要するに――雲母月、てめぇのことだ――」
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