頂門の一針

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頂門の一針

「空亡ってのは、要するに――雲母月、てめぇのことだ――」  ――やっぱりそうなのか、と、月は信じられないという気持ちより納得したという感覚の方が強かった。  そして、同時に酷い頭痛が月を苛む。思わず、ぐらりとした頭を抑えると、飛燕が神妙な顔をして「平気か」と訊いた。  大丈夫だと伝えると、飛燕は一呼吸してから、空亡の過去を語り始めた。 「空亡は、もう今から十年ほど前に生まれたあやかしだ。百鬼夜行の最後に描かれた太陽が、あやかしであるという説から生まれた妖怪だ」 「どうして、そんな妖怪が『私』なの?」 「俺は回りくどく説明するのが苦手だからよォ、バッサリと言わせてもらうぜ」 「奇遇ね、私もその方が好き」 「てめぇは、一度死んでいる」 「……死んでる? 私が?」  陽が落ちて、すっかり暗くなった部屋に飛燕は明かりを付けもせず、闇の中に赤い瞳を煌めかせていた。  月は、自分が死んでいると言われても、まるでピンとこないので、飛燕の言葉をすんなりとは呑み込めなかった。 「てめぇが死んだ理由は俺は知らねぇ。だが、てめぇの命に空亡の魂が宿っているのを感じる」 「私の命に、妖怪が憑りついているのかは分かってるってこと?」     
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