頂門の一針

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「かんたろ! やめて!」 「ルナ……!」 「酒呑童子には、なにもされてない! あれはただの挑発よ!」  乾太郎は、月を抱きしめながらまだ、酒呑童子である四十万飛燕に厳しい目を向けていた。  そんな乾太郎の顔をみて、飛燕はますます面白そうに口角を吊り上げ、紅い目を爛々とさせる。 「まだ、なにもしてないだけだ。月は、俺の女にすると決めたんでな」 「なんだと!?」 「乾太郎、あんな言葉、本気にしないで!」 「いいや、本気にしてくれていいぜ。少なくとも、俺は本気で、その女が欲しいんでな」  月が必死に乾太郎を抑え込もうと悲痛な声を上げても、飛燕はさらに追い打ちをするように、乾太郎に宣戦布告をした。  その目は、本気だと告げている漢の眼であった。 「私はあんたなんかの嫁になる気はないって言ったでしょ!」 「ルナ……、酒呑童子と何をしていたんだ。何の話をしていた?」 「か、かんたろ……」  こんなにも険しい顔をしている乾太郎は、初めて見た。酒呑童子を睨む彼のその目は、明確な殺意すら滲ませていた。  乾太郎が自分を抱く腕が強く、きつく身体を締め付けて、月は思わず痛みに眉を寄せた。 「か、勘解由小路! 無謀だぞッ!」     
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