例えば君がオレを忘れていても

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「……カデノコだけじゃないよ。月さん。僕も君の正体は知っていた」 「蔵馬さんも?」  そう言えば、以前みた夢の中で、蔵馬も居たのを思い出した。どうやら、あの夢はただの夢なんかじゃなかったらしい。 「わ、私は……そんなことはまるで存じ上げず……。でも、空亡という妖怪の話は、知っています。かつて、マヨヒガを追い出されてしまった『あやかし崩れ』であったと……」  奈和が、おずおずとしながら、告白した。かつて酒呑童子に迫害された妖怪が居たと聞かされたが、それがまさに空亡であったらしい。 「あやかし崩れって、なに?」 「あやかしとしては中途半端な存在だと烙印を押された者のことだよ」  蔵馬が耳に聞き取りやすい声色で、そっと紡いだ。 「空亡は、その存在が非常に特殊だったんだ。事の発端は、とあるゲームだよ」 「ゲーム……」 「日本神話を扱ったテレビゲーム。狼の姿をした主人公が妖怪退治をするという内容で、その最後のボスとして設定されたのが空亡だった」  月は、その言葉に目を丸くした。そのゲーム内容は、以前乾太郎にも語ったことのある、大好きだったゲームの話で間違いなかったからだ。あのゲームから、『空亡』という妖怪が生まれていたなんて思いも寄らなかった。     
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