例えば君がオレを忘れていても

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「そのゲームは、人気で随分と売れたらしく、設定資料集なんかも多くの人が読んだらしい。そこには、ラスボスの設定が描かれていたんだ。百鬼夜行の最後に描かれた太陽は『空亡』という妖怪で、全ての妖怪を退ける程の力を持っているのだと」 「じゃあ、ゲームのボスが本当にあやかしになったってこと? それなら、今時ゲームなんていっぱいあるじゃない。同じような妖怪が生まれていても不思議じゃないでしょ」 「空亡に関しては、本当に状況が特殊だったんだ。そもそも、空亡は、元々妖怪の名前ではなく、夜と朝の境目を意味する期間を意味していた。つまり、夜明けの時刻が『空亡』だったんだが、その説明を描いた文献を読んだことと、百鬼夜行の最後の太陽が混ざってしまって、勘違いされてしまったんだ」 「勘違い……誤解のあやかしってことなのね」  月は、その話にまだ完全に納得はできていなかった。なにせ、あやかし――つまり妖怪は人々の未知に対する恐怖心から生まれた誤解や勘違いが拡大解釈されて誕生したものだっているのだ。  空亡に関してだけ、誤解を認めないというのは奇妙な話だ。  以前、乾太郎も言っていた。『幽霊の正体見たり枯れ尾花』と。誤解からだろうと、あやかしとして生まれたのなら、きちんとしたあやかしになれるはずだと思った。 「その誤解の説を、無理やり広めさせ、マヨヒガから空亡を迫害追放したのが、酒呑童子の四十万飛燕だ」     
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