悪縁契り深し

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 やがて、月は、自分の名前が嫌いになり、出席を取る先生の点呼を避け、いつしか学校に行くことを嫌になり始めていた。  悲しくて、悔しくて、自分がその場にいるだけでどうして人から笑いものにされなくてはならないのか、理解もできない。何も悪いことはしていないのに――。  何もかもが嫌になっていた。学校に行きたくないし、家にも帰りたくない。自分の名前が嫌いで、キララルナが消えてしまえばいいのにと、そんなことを考えながらアスファルトを見つめていた。 (誰も知らないとこにいきたい)  昔読んだ、不思議の国のアリスに憧れた。ウサギを追いかけて、全く知らない世界に迷い込んでしまうアリスは、とても危険で大変な目に遭うのだが、それでもその時の月は、アリスのように不思議の国に行ってみたいと願っていた。  子供の頃には、大人には見えない不思議なものと出逢えると、テレビのロードショーで何度も放映しているアニメ作品も歌っていた。  だから、月はそういうものが本当に居るのなら、出会ってみたいと願った。  すると、自然と足取りは、人気の少ない雑木林のほうへと向かっていった。うっそうと茂る草木の中に入り、陽ざしを遮る木々の葉の下、道なき道を歩き出して、奇跡を捜した。     
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