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子供は危ないから入ってはいけないと注意されるような場所だったが、月はだからこそ何かあるかもしれないと、どんどん昏い雑木林に入り込んでいった。
自分が草木を踏みつぶして歩くガサガサという音と、風に吹かれてざわつく枝の音が、とても幻想的で、月はなんだか少しだけ気持ちが高揚していた。
ワクワクしていたのだ。ここなら、本当に何か誰も知らない不思議なものに出逢えるかもしれないと予感させた。
そして、月は出会った。その雑木林の影の中で、うずくまっているものを発見したのである。
ぎょっとするより、見付けた! という気持ちの方が強く、月はその陰で小さくなっているものへと声をかけた。
「どうしたの? だいじょうぶ?」
声をかけられたそれは、びくんと跳ねるように反応して、小さく震えていた。
それは幼い月でも抱きかかえられるような小さい、真っ黒な毛玉だった。
例のアニメ作品に出て来たマックロなんとかに似ていると思って、月は喜んでいたが、相手は随分衰弱している様子だった。
まん丸の黒い毛玉は、まるで丸くなった黒猫みたいではあるが、尻尾も手足もなく、もさもさした黒い毛に、二つ、愛くるしい目がついている何かのマスコットキャラみたいだった。
妖怪のススワタリと呼ばれるその存在は、所謂『あやかし崩れ』であった。
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