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あやかしが、『縁』を失い、姿かたちを保てなくなってしまって、最早ほとんど影になっている死にかけの姿。それがススワタリだった。
月は、ついに見つけた不思議な世界に連れて行ってくれるはずの案内人だと思ったそれが、想像以上に弱っている姿を見て、すぐに抱きかかえてあげた。
「小さい……、軽い……、震えてる……」
幼い月にも直ぐに分かった。この子は今、危険な状態だと。
助けなくては。その気持ちだけが前に出ていた。
小さな黒い毛玉を抱きかかえた月は、どうしていいか分からずに、ただただその小さな命を励ますために声を投げかけた。
「だめだよ! がんばって! 死んじゃダメ!」
そんな言葉が自分の口から反射的に出てきて、月は自分でハッとした。
ついさっきまで、自分なんて消えてしまえばいいのにと考えていたはずなのに、そんな自分が『頑張れ』とか『死んじゃダメ』なんて言っている。
きっと、仲間が欲しくて、月はこの弱っている毛玉を救いたかったのかもしれない。だから、その応援の言葉は、自分自身にも向けられていたものだった。
「私……私、独りぼっちなんだよ……。何も悪いことしてないのに……みんなから仲間外れにされて……」
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