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「あたし……まちがったあやかしなんだって……。だから、消えなくちゃ……」
毛玉がかすれるような声で、そんなことを言うから、月は目の奥がかっと熱くなるのを感じて、喉の奥がふるふると震えた。
間違っていたら、生きていてはいけないのだろうか。
普通じゃないと、胸を張ってはいけないのだろうか。
理不尽さが、『変り者』のレッテルを張り、つまはじきにする――。
それが月は悔しかった。
「いていいんだよ!」
思わず口から出たその言葉は、強く、熱く、貫く勢いがあった。
勝手に涙が溢れていて、叫ぶのと同時に、ぱぁっと光を孕んで散った。
「いても……いいの?」
きらきらした雫をそのまま糧にして、毛玉は小さな身体を震わせた。
この小さな毛玉が今までに経験した理不尽な想いが、月は不思議と自然に理解できた。訳も分からず、理不尽に周りから追い出され、居場所を失った。その気持ちがしっかり自分のことように繋がっているみたいに。
「あなたが、悪いことしたの?」
「……ううん、してないよ」
「あなたの名前はなんて言うの?」
「……ソラナキ……」
ソラナキ。変わった名前だ。
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