577人が本棚に入れています
本棚に追加
月が綺麗
「ルナっ!」
「……あ……、かんたろ……」
ほんの少しの間、意識がなくなっていたらしい。目が覚めると、自分の寝室のベッドの上で横たわっていた。
今にも泣き崩れそうな表情をしている乾太郎が、すぐ傍に居て、月が目を開けると共に、ぎゅうっと、力強く抱きしめられた。
「ルナっ……!」
「か、かんたろ……」
ベッドで横になっている月に、覆いかぶさるように抱きしめた乾太郎の重みと体温、彼の香りが心地いい。月は、少しだけ狼狽えながらも、乾太郎の抱擁に甘えるみたいに身を預けた。
周りには乾太郎以外に誰もいない。蔵馬も奈和も今日は帰ってしまったようだ。サスケも、寝室にはいないようで、リビングで丸くなっているのかもしれない。
「オレ……っ、お前が壊れるんじゃないかって……」
声を震わせて、怯えた子供みたいに乾太郎は月を抱きしめていた。本当に月の容態を心配していたのだろう。空亡の記憶を取り戻すことで、月の魂がどう揺らぐのか、乾太郎も分からないらしい。
月が、月でなくなるのか、それとも空亡として目覚めるのか。はたまた、どちらも消えてしまうのか――。
「大丈夫……私、変わってないよ」
最初のコメントを投稿しよう!