577人が本棚に入れています
本棚に追加
「私がこの部屋に来たのは偶然なの? それとも、『縁』があったから?」
「偶然は、多くの小さな奇跡が集まって、結果として現れる。その小さな奇跡のことを、『縁』と呼ぶんだよ」
月が、この部屋にやって来たのは、確かに偶然だったかもしれない。しかし、その偶然も過去から続いた『縁』が手繰り寄せあって出逢った必然だったとも言える。
「かんたろ。私、空亡に出逢えてよかったなぁって、思ってる」
「オレもだよ……」
――きみに出逢えたから。
二人は交わす視線の中に同じ気持ちを共有していた。
「サスケが車に轢かれた時、なんだかすごく助けてあげたいって思ったのは、空亡の記憶が混ざっていたからなのかも」
「違うよ」
「え?」
「ルナが、優しいだけだ」
「そんなこと、ないよ」
「ある」
ぎし、とベッドが鳴った。
乾太郎が、月のベッドに体重を乗せ、上体を近づけたのだ。目の前に、乾太郎の顔が来ていた。
「好きだ」
乾太郎が、短い単語を、透き通るような声で呟いた。
「そんなお前が、好きでたまらない」
「かんた、ろ……」
熱い。想いが重なり合って、吐息が混じりあう。乾太郎の大きな掌が、月の掌を掴み、指を絡ませた。
そして、乾太郎が、じっと月を見つめて来た。
最初のコメントを投稿しよう!