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ルナイズム
心地よい春の朝は、どうしてもまどろみが誘惑してきて、瞼を重くさせる。
「ニャア」
幸せな夢の中にいつまでも居たい。そんな気持ちに水を差すサスケの鳴き声に、月は目を開く。
「おはよ……サスケ」
横になっていた月の目の前に、黒猫のサスケの顔があった。
早く起きろと言っているのだろうか。ベッドから降りたいらしいサスケは催促するように、ニャアと鳴き、月を見下ろしていた。
ううん、と背伸びをしてから、意識を覚醒させると、サスケを抱き上げて、月はベッドから身を起こす。
寝室のドアを開き、リビングに行くと、キッチンから愛しい人の声がした。
「おはよう、ルナ」
「……っ、お、おはよ、かんたろ」
柔和に微笑む乾太郎の表情に、月はびくんと肩を跳ね上げて、胸の鼓動を高鳴らせた。
昨夜のことを、思い出してしまった。
乾太郎との、一夜を。
顔が一気に赤くなって、熱くてたまらなくなる。
「サスケが、夜、寝室に入りたいって鳴いてたから、入れてあげたんだ」
「そ、そうなんだ。わ、私、すっかり熟睡してたよ」
「知ってるよ。……見ていたから」
微かに頬に紅葉を散らし、苦笑するように乾太郎は言った。照れていると分かった。
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