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そんな彼の表情が、可愛らしくも思える。
しかし、恥ずかしさが何よりも強い。
「すごく、可愛かった」
「~~~~っ」
言葉なんか出せるわけもなく、月は卒倒しそうなほど脳がオーバーヒートしてしまう。
熟睡している無防備な顔をしっかりと見られてしまったようだ。自分の全てを見せてしまったような恥じらいが月を襲い、眩暈でも起こしかけない熱が平常心を沸騰させる。
「コーヒー、ホットでいい?」
「うん……」
苦いブラックを飲み干したいと思った。もう暫くは砂糖成分は摂る必要がないのではというほど、甘ったるいひと時を月は経験してしまった。
あんなにも心地いい世界があるだなんて、初めて知って、乾太郎の腕のなかで何度も甘えてしまったことが、脳裏に浮かぶ。
乾太郎がマグカップに黒々としたコーヒーを注ぎ、香ばしい匂いを運んでくる。
「あの、その……ありがと……」
「熱いから、ゆっくり飲んでね」
「う……、はい」
飲み干そうなんて考えを読み取られてしまったのだろうか。それとも、のぼせ上って慌てている表情を見て、注意してくれたのか。
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