ルナイズム

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 乾太郎は、ゆったりとした落ち着いた声で、コーヒーをテーブルに置くとまたキッチンに戻っていく。見たところ、スクランブルエッグを作っているようだ。脇にはロールパンの背中が裂かれた状態で用意されている。今日の朝食は、ロールパンに、スクランブルエッグを挟んだバター・エッグロールらしい。  月は、落ち着きを取り戻すために、苦みある温かいコーヒーを啜り、ふう、と一息ついた。  やがて、テーブルに朝食が並び、乾太郎が対面に腰かけると、二人で照れながら手を合わせることとなった。  シンプルながらも、純粋に美味しいほかほかのバター・エッグロールは甘みと塩味の加減が最高だった。 「ルナ。オレ、四十万飛燕に会いに行くつもりだ」 「えっ」 「あいつと、決着を付ける必要がある」  そう言う乾太郎の眼差しは覚悟を持ったもので、強い意思に満ちていた。 「決着って……相手は酒呑童子なんでしょ。あやかしの大御所で、マヨヒガの最上級妖怪だって……貧乏神よりも強大だって、聞いた」  そんな相手と決闘なんてしたら、乾太郎もただでは済まないはずだ。乾太郎が危険な目に遭う事は、月は望まない。しかし、乾太郎の意思は固そうだった。 「お前はオレのだ。あいつに、渡すわけにはいかない」 「……っ」 「大丈夫、あやかしとしての格の違いだけが、全てじゃない」  月が不安そうな顔をするのを見て、乾太郎はにっこりと笑みを浮かべた。心配は無用だと言っているのだろうが、月はやっぱり乾太郎には行ってほしくなかった。     
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