貧乏神の能力

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「なんで、急ブレーキを……」  特に何か急に止まるような場所ではない。信号も青だった。そのまま走らせていればいい道路で、その車は止まっていた。  運転手が下りてきて、なにやら道路を覗き込んでいた。 「おっ、よかった傷ついてない」  車の様子を確認したらしい。すぐに運転席に戻って車は走り出していった。  そして、そこにあるものが月の目の前にさらけ出された。 「!!」  なんと……、そこには一匹のネコが横たわっていた。  前足が動いている。生きているネコだ。  だが、後ろ足がだらんとして痙攣していた。 「轢かれたんだッ」  月は駆けだした。  あの車が急ブレーキを踏んだ理由は、ネコが飛び出して来たからだった。ネコを躱し切れず、轢いたらしい。運転手はそれで車にキズが出来てないかを確認して、すぐに走り去っていった。  ネコのことなど目もくれていなかった。  月は道路に横たわるネコを抱き上げ、その後ろ足の痛々しい姿に、表情をしかめた。自分のことのように痛みが走るようだった。 「病院に、行かないとッ」  街を見て回った時、病院を見付けた。しかしそれはヒトのための病院だ。獣医ではない。獣医は散策の時に見付けられていない。     
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