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「酒呑童子に恐怖している他のあやかしも、裏を返せば、彼に『恐ろしい暴君妖怪』というレッテルを張り付けているんじゃないの?」
月のあまりにも真っ直ぐな言葉に、奈和は目から鱗が落ちたように、頷いた。
「あいつは確かに威圧感がある。迫られたら緊張するけど、直接あいつから何かされたことって、ある?」
「……ありません」
奈和が、確かにそう言った。
蔵馬も押し黙った。乾太郎はまだ複雑な顔をしていたが、空亡でもある月からそう言われて、どうしていいか分からないような行き場のない感情を浮かばせる。
「あのね、かんたろ。だから、私も、あいつと話したいの。かんたろだけの問題じゃないんだってこと、分かって欲しい」
「……参ったな。どうやら怖気づいていたのはオレだったみたいだ。ルナのほうがよほど肝が据わってた」
はぁと、溜息を吐いて、乾太郎は観念したような声で肩を落とした。
「三大妖怪の一人とやりあうって事に、ちょっとビビってた。オレだけなら無茶もできるなんて考えて、みんなを巻き込まないようになんて、カッコつけてみたけど……。度胸が違ったよ」
タハハ、と困ったように照れ笑いをする乾太郎に、月はほっとしていた。
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