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あやかし調査員として
酒呑童子に用事があると告げると、彼の取り巻きの黒服のあやかしは大人しく道を譲ってくれた。
恐らく、酒呑童子の四十万飛燕本人から、来たら通せと命じられていたのだろう。
丁重にもてなされ、月たちは、四十万飛燕の部屋に赴いた。
「来たか」
「待ってたって感じね」
「あんな中途半端なところでやめちまったら、欲求が溜まるだろうが」
飛燕はクク、と喉を鳴らして笑っている。どこか面白そうで威圧感より、無邪気さが感じられた。
月はそんな彼を見て、純粋に、彼は喜んでいると感じ取った。
座敷に膝を立てて座り、酒呑童子はやって来た四人を眺めて「ま、座れや」と促がした。
月と乾太郎が前に出て、その後ろに蔵馬と奈和が続き正座で腰を下ろす。
暫し、緊迫感に似た空気が走ったが、飛燕が挑発的に口火を開く。
「俺の嫁になる準備ができたんだよな?」
「私、優しい人のほうがタイプ」
「そっちの貧乏神みてェにか? 生っちょろい夜伽より、激しく乱れるほうが燃えるぜ」
「いい加減、挑発的な口調を辞めてよ。ちゃんと話そ?」
はぁ、と大きなため息を吐き出した月に、飛燕がつまらなそうに頬杖をつき、フンと鼻を鳴らす。
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