貧乏神の能力

10/11
前へ
/314ページ
次へ
「払います。私が、そのネコを世話しますから。助けてあげて」 「……ああ、そう? じゃあ、はい」  無感情な返事だった。月の行いをバカな女だと思っているのだと表面に現れていた。 「でもさ、これじゃ多分、このネコ、良くなっても後ろ足は使い物にならないと思うよ。リハビリとか、色々と……」 「良いからッ! 助けてあげてッッ!!」  思わず、叫んでしまっていた。  感情が爆発して、怒りがそのままぶちまけられていた。  そして……、とてつもない悲しみがやってきた。こんなにも、世の中は損得で判断されているのだと、思い知らされたのだ。  すべては、お金が影響する――。  結局、月はネコの血で汚れた自分の服と、沢山の出費で打ちのめされたようになっていた。  タクシーに任せて走らせたから、ここがどこかもはっきり分かっていない。  心細さが一気に押し寄せた。  もう、お金がない。家に帰るためにも、交通費マネーをチャージしなくてはならない。  何をするにも、金が要る。金、金が全てだ。 (ああ、本当に……貧乏神なんだ……)  くたりとくずおれて、獣医の待合室の椅子にぺたんと腰を下ろす。 「キララちゃん!」 「え……?」  心をほぐすような声がした。  待合室の入口を見ると、そこには乾太郎がいた。     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加