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五円玉のヒミツ
ネコは、手術もあり、その日はそのまま獣医で預かることになった。
また後日、退院の際に受け取りに来て欲しいと言われ、月と乾太郎は二人、帰路についていた。
「……今日だけで、十五万円以上なくなっちゃった」
「……分かったかい? これがオレの能力だ。本当に、部屋を出るなら早いほうが良い」
「そうかもね」
茜色の空の下、二人はとぼとぼという様子で歩いて帰って来た。やっと帰ってこれた我が家というには、馴染みが薄い新しいいわく付きの部屋は、味気ない。
まさかとは思ったが、乾太郎の言葉を信じるよりない。彼は本当に貧乏神らしい。
このままの速度でお金が消費されていけば、確かに破滅してしまうことだろう。出るならば、できるだけ早いほうが良いと思った。
「ねえ、あのネコ、助かるよね?」
「え、ああ、うん。助かるよ。間違いなく」
「かんたろがそう言うと、ほんとにそうなんだろうな。良かった」
「……キララちゃん、ネコの心配をしていたのか?」
「ああ、そりゃあまぁお金のことは、考えていたけど、それでもあの子を救えたかどうかのほうが気になるよ」
「なぁ、本当にきちんと考えたほうがいいよ。この部屋を出ることを」
「出ないよ」
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