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「何だって?」
「出ない。だってこの部屋、ペット可だもん」
月の発言に、乾太郎が面食らったような顔になった。
「きみは……、きみはまさか、あのネコと一緒にまだここで過ごすつもりなのか? 分かっただろう、オレの貧乏神の効力が」
「何よ、出ていってほしいの?」
「…………」
押し黙った乾太郎を見て、くすっと小さく笑った月。やっぱりという気持ちがあった。
乾太郎は、月が出ていくことは望んでいないらしい。
「……生活はどうするつもりか、考えているのか?」
「まだ始まったばかりじゃん。ちょっとトラブっただけで、いきなり全部やめちゃうの、私キライなんだよね」
「……変な子だなぁ、きみって」
「貧乏神のほうが、オカシイわ」
そして二人で少しだけ笑いあった。
「服一着ダメにしちゃったなー」
ネコの血がべっとりとついていて、洗ってもきっと落ちないだろう。残念だが、今日着ていた服は捨てるしかない。
「明日、服買ってこようかな。またお金がなくなっちゃうんだろうけど」
「……キララちゃん。少しオレの話を聞いてほしい。真面目な話だ」
「なに? 改まって」
深刻な様子の乾太郎に、きょとんと首を傾げた月は、少しだけ背筋を伸ばした。
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