五円玉のヒミツ

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「オレが貧乏神だってことは、もう分かってくれたと思う。ここで暮らす以上、きみはこれからどんどん大きな出費や、トラブルに巻き込まれてしまうことになる」 「うん……」 「そうなると、ここの家賃もやがて払えずに追い出されることになるだろう。その時本当に一銭もないと路頭に迷ってしまうだろう」 「それはいやだなぁー」 「……実は、貧乏神の能力に於いて、一つだけルールがあるんだ」 「ルール?」 「そう。貧乏神の能力が及ばないお金がある」 「えっ、なにそれ?」 「貧乏神は、金を奪い取ってしまう能力を持っているが、逆に言うと、金以外のものは、なんでも提供できる存在だ。曲がりなりにも神様だからね」 「それって、かんたろが、お金以外の問題だったらなんでも解決してくれるってこと?」 「そんな風に思ってくれていい。食べ物にも困らないし、身の危険や病気にも襲われない。ただ唯一、金だけは失われていく」  乾太郎が、召使のようにご飯を用意してくれたりしたことを思い出した。ちなみに洗濯や掃除もしてくれていた。  昨日の下着が干されているのを見付けた時は、ぎょっとしたが、それを言うような雰囲気にはなかったので、特に何も言っていないが。 「お金が関わることだけは手助けできない。その代わり、それ以外に苦しむ時はオレがきみを救う。それが貧乏神の掟だ。生き様と言ってもいい」     
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