五円玉のヒミツ

5/9
前へ
/314ページ
次へ
 ――六種類の硬貨をじっくりと見ていて、一つだけ、確かに仲間はずれがあった。 「五円玉だけ……漢字表記で書いてある」 「その通り」  五百円は、500。百円は100。五十円も50、十円も10。そして一円は1。  しかし、五円だけは、漢数字で『五円』と書いてある。五円玉だけは唯一、仲間外れだった。 「それは実は、あやかし硬貨なんだ」 「あやかし硬貨?」 「オレたちみたいな怪異が利用する硬貨。日本国との取り決めで、五円だけはあやかしと同じ通貨を利用している」 「え? は? 日本国との取り決めッ? 国がかんたろみたいな、妖怪とか神様を認めてるってこと!?」 「その通り。そして、人間とあやかしが、交易をする時に使うのが『五円』玉。それを示すために、五円だけは漢数字で描かれているんだ」  にわかには信じがたい話だったが、貧乏神本人がそういうと、納得せざるを得ない。 「もしかして、この五円玉が、貧乏神の能力が及ばないお金なの?」 「そうだ。つまり、五円玉でお金を貯金していれば、キララちゃんは、オレから金を吸い上げられることがなくなる」 「そ、そんな裏技があるの!? なんで早く教えてくれないのよ!」 「……実際できると思うかい? 五円だけでの貯金なんて。現実的じゃないだろー?」     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加