池袋の地下、マヨヒガの商店街

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池袋の地下、マヨヒガの商店街

 引っ越しして三日目。  月は、その日の朝、乾太郎と共に出かけることになった。 「ここでいいの?」 「うん、意外かな?」  乾太郎に連れてこられたその場所は、池袋にある六十階建ての大きなショッピング施設だった。中には飲食店やファッションショップ、キャラクターグッズを扱う店もあるし、屋内遊園地のようなものもある。しかも上階には水族館まであるし、文化が花開く華やいだ場所という印象だ。  今日は、乾太郎の提案した『あやかし仕事』に取り掛かるため、この場所に連れてこられたのだが……。 「なんていうか、あやかしを相手にするんだから、てっきり古ぼけた神社とか……廃屋とかに行くんだと思い込んでた」 「その調子じゃ、貧乏神はみすぼらしい老人だと思ってたみたいだなー?」 「う……」  ニタリと悪戯な笑みを浮かべた乾太郎に、図星を突かれたので反論できない月。 「……でもそっか。思い返してみたら、乾太郎はこんなだし、憑りついてるマンションは綺麗で素敵だし、あやかしだからって古臭いってこともないのかな」 「そういうこと。言ったろー? あやかしも立派に国認められて、日常に溶け込み暮らしてるって」     
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