池袋の地下、マヨヒガの商店街

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「なんか、まだ信じられないけど……いや疑ってるわけじゃないけど、イメージとのズレが……」 「もちろん、中には昔ながらの姿をしてるやつもいる。大抵困っているあやかしってのは、そういう奴らが多いけど。時代に適応できなくてさ」  乾太郎と話しながら、こんな場所を一緒に歩いていると、少しだけ妙な気分になる。  乾太郎は確かに貧乏神かもしれないが、その容姿は普通の青年で、今日着こんでいる服装もジーンズにジャケットと、スリムに決めている。整えられた顔立ちで姿勢よく歩く乾太郎に、時々すれ違った女性たちが視線を向けていることを気が付いていた月は、なぜだかちょっとだけいい気分だった。 (浮かれてる場合じゃないけど)  乾太郎の隣について、ビルの中を歩いていくと、エレベーターまでやって来た。 「これに乗る」 「これって……展望台行のエレベーターじゃん」  この施設の六十階には展望台と高級レストラン、アトラクション施設がある。そこに行くための直通エレベーターだが、入るためにはチケットが必要だった。正直なところ、貧乏神に憑かれた状況だと、一円の出費も抑えたいので、少しだけ月はたじろいだ。  しかもこのエレベーターが動くのは十時からのようだ。時計を確認してもまだ朝の九時。動き出すには早い。     
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