池袋の地下、マヨヒガの商店街

6/11
前へ
/314ページ
次へ
「は、はい……」  威圧的な態度に、「うひょー」と思ったが、月はとりあえず従順に頷いておいた。内心、あまり怯えてはいない。子供の頃から度胸だけは据わっているのが月の取柄なのだ。  双子の厳しい視線をくぐり抜け、ひそめた声で乾太郎に訊ねた。 「あの二人、門番かなにか?」 「まぁそんなところかな。阿形(あぎょう)吽形(うんぎょう)だよ。狛犬、みたことない?」 「ああ。神社の境内にある……?」 「そうそう」 「なんか、すごく上から目線だったけど」 「お堅い性格してるだけだよ。ゆるしてやってくれ」 「別に、嫌いじゃないよ」 「……やっぱり、キララちゃんはそう言うと思った」  破顔した乾太郎に、月はドキンと胸が鳴った。  赤い橋を渡り切ると、砂利道がまっすぐ、マヨヒガの玄関に伸びている。その上を踏みしめながら、二人は進んでいく。 「きみは、否定から入らないよね。受け入れようとしてくれる」 「そんなことないわよ。私、最初にかんたろに出ていけって言ってのけたでしょ。否定からの女よ。騙そうなんて思うなよ?」 「……可愛いな、ほんと」 「え? なに?」     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加