あやかしインベスティゲーション

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 乾太郎は探偵という表現を避けていたようではあるが、『インベスティゲーション』という名称に親しみがないと、ぱっと何の仕事をしているのか分からない。 「はー……、ほんとにこんなんで大丈夫かな……」  かくんと肩を落とし、少し気晴らしの休憩をしようと橋の方に目を向けた。そこにはあの双子の青年、阿形と吽形がこちらを背にして立っている。  退屈ではないかなと思った月は、ちょっと声をかけてみようと駆け寄った。 「こんにちは。阿形さん、吽形さん」 「私は吽形だ。阿形はあっちだ」 「あ、ごめんなさい。全然見分けつかないけど……」  阿形が細い眉根を寄せてぎろりと凄んで来た。表情は非常に強面で愛想がない。真っ黒なスーツ姿も威圧感が増す。大柄で体格もいいので、凄まれると怯えてしまう人もいるかもしれない。が――。 「店を出したので、挨拶させてくださいよ」  と、月は怯まなかった。 「今は仕事中だ」 「ビラ配りなら、向こうでやりなさい」  容姿の声も、そっくりで見分けがつかない。とりあえず、向かって左が阿形、右が吽形らしいが、明日になったらまた忘れそうだ。 「あやかしインベスティゲーション、とか言ったな。妙なことだけはするなよ」 「あ、もう名前を憶えてくれるんだ」 「あれだけ後ろで声がしていればな」 「ふうん」     
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