あやかしインベスティゲーション

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 きちんと名前を憶えてくれている人もいるのかと、ビラ配りも存外無駄ではないのだなと少し気持ちがマシになった。 「あやかしの方々のための調査依頼を請け負いますから、何か気になることがあれば、よろしくおねがいします」 「分かったから、もう邪魔をするな。ひっこめひっこめ」  まるで厄介な野良猫でも追っ払うみたいに、しっしっ、と手を振って月を追っ払うと、阿形と吽形はまた向こうを睨みつけるように向き直り、背中をみせた。 「キララちゃーん」 「あ、かんたろ」  と、マヨヒガのほうから、乾太郎が手を大きく振って呼んでいた。  乾太郎の元まで駆け寄ると、彼はニコニコと嬉しそうにして、すぐに月の手を握り、引き寄せた。 「わっ、なにどこにいくの?」 「こっちこっち」  バタバタとマヨヒガの玄関をくぐり抜け、ロビーまでやってくると、さっきは見過ごした表札が沢山かかっている掲示板の前に連れてこられた。  そこには沢山表札が吊り下げられていて、マヨヒガの中での部屋番号と、そこの使用者名が記載されている。  一〇三四『あやかしインベスティゲーション』と達筆な文字で描かれたそれこそが、月たちの部屋の表札だった。 「これでマヨヒガの仲間入りだ」 「これでお客さん、来るの?」 「大丈夫、まず間違いなく一人はくる。身内ではあるけどさ」     
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