あやかしインベスティゲーション

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 面と向かって乾太郎から褒められるのは恥ずかしい。とりあえず、どうやら乾太郎の知人が問題を抱えてここに仕事として持ってくると分かったので、月は気持ちを立て直すことができた。  開業しても仕事がないなんて間抜けなことにはならなそうだ。  乾太郎と月は、一〇三四の部屋に戻ると、来客を待った。  途中で、乾太郎が小豆洗いの店で珈琲を貰って来たと良い、ちゃぶ台の上にカップを置いた時、ちゃんと珈琲豆で淹れられた珈琲なのかと疑ったくらいだ。 「邪魔するよ」 「おっ、来たな」  程なくして、男の声が衾の向こうからした。  と同時に、すっと静かに衾が開き、そこには眼鏡をかけた長髪の男性が立っていた。身長は百八十はあるだろう。細身で白くインドアな印象を受ける容姿だった。来ている服装は、シャツにネクタイ、スラックスと、企業戦士という出で立ちである。 「まさか本当に事務所を開いているとはね」  ぞくりとするほど、美声だった。低く穏やかだが、妙に魅力のある艶だった声質に、耳が自然に向けられてしまう。 「紹介しよう、キララちゃん。こいつは、オレの友人の和泉(いずみ)蔵馬(くらま)。疫病神だ」 「や、疫病神と貧乏神が友達同士なんて、エイリアンとプレデターくらい魅力的ね」 「それ、誉め言葉?」  軽口を言える程度には余裕はあるよ、と目で訴えてやったが、疫病神からの依頼ってなんなのだろうと少しだけ緊張もした。     
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