あやかし調査員の初仕事

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あやかし調査員の初仕事

 ――疫病神こと和泉蔵馬からの初の依頼を引き受けることになった月は、その日からまずは標的を知るために調査を開始した。  すなわち、蔵馬のストーカーが一体誰なのか、またどういう目的で追いかけまわしているのかを調べるのが最初の目標になった。  蔵馬本人から聞き込みをして、ストーカーの心当たりを窺ったところ、犯人に心当たりはないことと、ストーカーされる場所はある程度決まっているらしいということだった。  基本的に、不幸を捜して集めまわっている時も、周囲に妖しく思われないように、スーツを着込み、鞄を手に持ち、しっかりした足取りで歩くという。  これでどこから見ても、営業のサラリーマンだと判断されるはずなので、不審者としては人の目から映ることはないというのが、蔵馬の言い分だった。  誰かに目を付けられるようなことも、基本的にない。  なにせ、彼は疫病神だ。自分に誰かが近寄れば、その人を不幸にしてしまうと分かっているから、基本的に人と接触を取ろうとしていない。もし、疑われそうになったら、スマホを片手に誰かと電話をしている振りをしてやり過ごすのが常套手段だと蔵馬は言った。     
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