577人が本棚に入れています
本棚に追加
「地縛霊なんてそんな低俗なんじゃないよ」
そう言ってへらへらと間抜けな感じで笑う彼は、手をぱたぱたとさせて否定した。幽霊にしては妙に存在感があるというか、人間臭い。
それに身体が透けているとか脚がないとか浮遊しているとか、そういうのもない。
本当に、普通の人間にも見える。
「じゃあ、自己紹介しなさい!」
「ああ、そうだね。これから一緒に生活していく仲だし」
「私は認めてないけど」
月は、わざと強気な態度で居た。そうでないと、状況に気圧されると思ったのだ。本当ならぶっちゃけ、怖い状況ではないか。無理やりにでも勇気を奮い立たせて強気に出てないと、竦みそうだった。
そんな月の警戒心を慮ってか、青年は、ゆっくりとした動作で、月から距離を取り、お辞儀した。姿勢のいい、気品のあるお辞儀は、ジェントルマンな好青年だった。
「オレは勘解由小路乾太郎。この部屋に憑りついてる貧乏神」
「なに? なんて言った?」
聞きなれない名前に眉を顰め、その後に続いた聞き捨てならない単語に、月は食いついた。聞き間違いならいいのだが、と少しの期待も込めていた。
「カデノコウジ・カンタロウ。好きに呼んで良いよ。キララちゃん」
最初のコメントを投稿しよう!