あやかし調査員の初仕事

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「こうなったら、現行犯で締め上げるのが一番手っ取り早いわね」 「アグレッシヴだねぇ、キララちゃん」 「のんびりやってたら、私が破産するからね……」  と、いう結論から、尾行が始まっていた。先に蔵馬を歩かせて、離れたところから彼を観察しておく。もし、彼の背後にいつまでも張り付いて行動するような人物がいればそいつがストーカーだろう。  幸いにも彼がストーカーに遭いやすいところというのも、ここ池袋だった。六十階建てのこの施設の周辺で、後を付けてくる気配がすると言うのだ。  蔵馬は池袋の街を歩き始めた。時折立ち止まり、何かを拾い上げているように見えるのは、まさに不幸を拾っているところなのだろう。 「け、結構池袋って不幸落ちてるのね?」  ちょくちょくしゃがみこんで落ち葉でも拾うような仕草を繰り返す蔵馬の様子に、若干ぞっとした。普段暮らしている街にはそんなに不幸が転がっているものなのかと。  もしそうなら、蔵馬が居なくなってしまったら、この街はどれほど不幸のどん底に落ちるのかと震えた。 「人がいるところには、必ず運命が生まれるからね。運命の綻びが不幸になる。大都会程、不幸がゴロゴロしてるもんさ」  背後についている乾太郎が、そっと耳打ちしてきた。     
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