あやかし調査員の初仕事

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「もしもし、こちら月です。今のところストーカーの気配はありますか?」 「今のところはない。しかし僕の経験上、そろそろ来ると思う。油断しないで欲しい」 「何か違和感を感じたらすぐに連絡してね」 「分かったよ。あまり人通りの多い道を歩きたくないんだ。裏通りに入る」  自分の不幸が他人に移ることを避けるためだろう。ここは割と人の流れがある。奥には少し狭い日陰になった通路が伸びていた。蔵馬は通話を切ると、そっちに向かって歩き出す。 「移動しはじめたね」 「こっちも見失わないように」  人込みの中に紛れかけた蔵馬を追いかけようと、雑踏を潜り抜けようとして、月はよそ見をして歩いていた人にぶつかってしまった。  どうも、相手はスマホを眺めながら歩いていたらしい、前方不注意でフラフラと月のほうに出てきたのだ。  すんでのところで身を捻ってその人を躱そうとしたのだが、鞄が引っかかって縺れ、ぶつかった。その拍子に、相手のスマホが手から零れ落ちてしまった。  ガシャ!  嫌な音がした。アスファルトに液晶画面から落下したスマホは、所持者が慌てて拾い上げると、無残な姿になっていた。  画面は真っ暗で何も映らない。タッチパネルは割れてひしゃげている。 「ちょっとッ!!」 「ご、ごめんなさい」     
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