あやかし調査員の初仕事

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 みるみる怒りに満ちた顔に変化させたスマホ所持者は破損したスマホを月に突き付けて唾を飛ばす勢いで怒号を上げる。 「あんたのせいでスマホ死んだじゃん! いくらしたと思ってんのコレ!」 「で、でも、よそ見してたのはそっちで……」 「ハァッ? あんたがぶつかったから、スマホ壊れたんですけど! 弁償しなさいよあんたァ!」  とんでもない言いがかりだった。  月は後ろに居た乾太郎を思わず見返した。だが、彼は首を横に振る。  その反応で思い出した。  これは貧乏神の効力のせいなのだと。きっと、ここで弁償の代金を支払うことで、貧乏税(月がそう名付けた)を徴収されるのだ。  断ることもできるだろう。だが、どうせどちらにしても、貧乏税はあとで別の形で襲い掛かってくる。  今は尾行調査の任務中だ。  ここで問題を引き延ばしにしていて、今日のあやかしの依頼を失敗したら、元も子もない。 「分かりました。弁償します。おいくらですか。今、現金で出します」 「エッ、あ、そう? なら、十万くれる?」 「………………分かりました」  月が思ったよりもすんなりと弁償を口にしたせいだろうか。相手は寧ろにへらとだらしない笑みを浮かべて、吹っ掛けてきた。     
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