あやかし調査員の初仕事

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 曲がり角を曲がった先から電話しているだろう蔵馬に対して、今、月と乾太郎がいる場所からはその二人のみ。  どちらかが、ストーカーだろう。  あの曲がり角の方に興味を示しているほうが――犯人だ!  女性二人は、月と乾太郎の前方をゆっくりと歩いている。  そのまままっすぐ行けば白、曲がれば黒。そう判断した。  一人は、真っ直ぐ行った。  もう一人は――。  曲がり角で停止した。そして、そうっと曲がった先を窺っている。そこからなら、電話をしている蔵馬を確認できるだろう――。 「あいつだぁ!」  月は刹那、駆け出した。曲がり角から様子見をしている女性を標的と決めた。  恐らく高校生か自分と同じくらいの女の子だ。眼鏡で身長は低い、気弱そうな表情からマウントを取ればいける! と判断した。  完全に猪突猛進が似合う月の動きに、乾太郎は「おいおい」と小さく呆れた声を上げていた。 「そこのあんた、お縄につけえ!」 「へっ、きゃあっ!?」  さっき金をむしり取られたフラストレーションがあったからだろう。迫りくる月の形相は悪鬼羅刹も引き攣るようなものであり、標的に定められたその眼鏡女子はそれこそ乙女らしい悲鳴を上げて月に壁際に抑え込まれた。 「あんたがストーカーね!」 「えぇっ?! ち、違います!」     
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