あやかし調査員の初仕事

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 きょとんとした月はスマホをもう一度見つめた。  そう言えば、さっき一度状況確認のために蔵馬に電話をした。  あの時の電話のことだろうか。 「その人の声、ゆうちょんに似てて、もしかしたらって……」 「「「ゆうちょん?」」」  その疑問の声は三人、綺麗にハモっていた。  眼鏡少女は困ったように、恥ずかしそうに答える。 「ゆうちょん……声優の森川勇気さんです……。電話してた時の声、そっくりで、かっこよくて……もしかしてゆうちょんかもって、追いかけたんです……」  真っ赤な顔になって俯く眼鏡の少女は、消え入りそうな声で言った。余程恥ずかしい告白だったみたいだ。 「一応聞くけど、和泉さん、ゆうちょんじゃないよね」 「違います……」 「ご、ごめんなさい! ひとちがいでしたぁぁぁあ! で、でも本当にそっくりなんです、声! あ、あの、『俺の槍で貫かれたいのか』って言ってみてください!」 「お、俺の槍で貫かれたいのか……?」 「はぁぁぁん! ほら、ゆうちょんだよぉお!」 「違うって言ってるでしょう!」  どうやら……、そういうことらしい。  蔵馬がここによく来るのは、マヨヒガを訪ねるためだ。その都度、不幸を拾いながら来ていたのだろう。     
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