その小さな穴から見えたもの

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その小さな穴から見えたもの

 池袋六十階建てビルの地下。マヨヒガにて、月と乾太郎は『あやかしインベスティゲーション』に帰って来ていた。  勿論、依頼主である和泉蔵馬も一緒で、二人の正面に座り、今回の事件に対して感謝を述べていた。 「本当に助かったよ。月さん」 「……いや……なんかちょっと拍子抜けって言うか、あれで良かったのかなって気持ちの方が強いけど……」 「そんなことはないよ。僕らあやかしでは、人間相手にあそこまで積極的にはアプローチできなかった。月さんのお陰だ」 「うーん、素直に喜んでおく。とりあえず」  あやかし相手の調査員なんてとんでもない事件に巻き込まれるのではないかと怯えたけれど、蓋を開けてみれば、というやつだった。 「さて、それじゃあ報酬を支払おう」 「あ……そっか、そうだった」  すっかりその為に頑張っていたという気持ちを忘れていた。  あやかしの報酬とはどういうものなのだろうと、少し期待と不安で胸が鳴る。  蔵馬がサイフを取り出すと、そこから『五円玉』を取り出した。 「五円……?」 「そう、五円はあやかしの通貨。五円は御縁であり、(えにし)こそ財産であります」     
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