その小さな穴から見えたもの

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「だろう」 「なに、なに、二人して」 「僕らは、疫病神に貧乏神、人から忌み嫌われる存在の代表です。いつも人からは嫌われてばかりなので、友人と呼べる人はいません」 「そりゃあ、なんていうか仕方ないんじゃないの?」 「先ほどの五円玉を覗いた時、僕の顔を見たでしょう?」 「うん、なんてことない和泉さんの顔だった。ハッキリ言って申し訳ないけど、がっかりした。もっと金銀財宝でも貰えるのかと思ったから」 「あっはっはっは!」  ざっくばらんに言ってのけた月に、美しい声で笑いだした蔵馬。そしてそれに釣られてか、乾太郎も「くくっ」と笑っている。 「やっぱり面白い! 月さん、あなたは凄い」 「な、なにが?」 「あのね、今キララちゃんはオレたちの姿がただの人間に見えてるだろ?」 「うん」 「でも、この姿はあやかし本来の姿じゃない。人の世に溶け込むための化けの皮ってやつなんだ」 「……それじゃあ本当は二人とも気色悪い妖怪変化ってこと?」 「そう見える人には、見える」 「五円玉から覗き込んで見たものは、その持ち主の心眼で映し出される。普通の人間だったら、五円玉の穴から疫病神を覗けば……顔を引きつらせて卒倒するだろうね」     
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