その小さな穴から見えたもの

6/10
前へ
/314ページ
次へ
「舌切り雀のつづらだよ」 「舌切り雀ってなんだっけ。玉手箱?」 「それは浦島太郎だよ、まぁ別に知らなくてもいいさ。これを君に譲る」 「……譲るって……いいの?」  ほとんど、お弁当箱みたいなサイズの小さなつづらは、黒く漆で塗られていて、艶やかった。金の縁取りがされている高級感もある。 「それが、今回の仕事へのお礼だと思ってくれ」 「そういうことなら、貰っちゃうよ? いいかな? かんたろ」 「いいよ。きちんとこっちに聞くの、なんか可愛いぞ、キララちゃん」 「なんか小ばかにしてるな、舐めんなよこんちくしょう」  一応相手は神様だが、悪態ついてやるくらいしてもバチは当たらないだろう。この二人なら。そんな風に思って、つづらを受け取り開いてみた。 「えっ、ウソ、すごっ!?」  そこに収まっていたのは昔話で出てくるみたいな小判だった。黄金色の輝きで目が眩むほどに眩しい。年代物のはずだろうに、今造られたばかりなのではないかと思うほどキンピカだった。 「こ、これホントに良いの!?」 「お近づきの印だよ」 「かんたろ! どうしよう!」 「……ほんと可愛いな、こいつ……」     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加