その小さな穴から見えたもの

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「蔵馬と一緒だ。お前が困っていたら、助ける。頼ってくれ。……金のことだけはどうしようもないけど」 「……ぷっ」  しおらしい乾太郎の言葉に、月はなんだかおかしくなって噴き出した。 「あっ、おい笑ったな」 「ゴメン、なんか……くすくす、ダメな男に捕まったような気分だった」 「お、オレをヒモみたいに言わないでくれ! それは流石にプライドが揺らぐ!!」 「あははは、分かった分かった!」  人間臭い貧乏神に、なんとも珍妙な疫病神。  変な友人ができてしまったが、なるほど確かに、五円玉は立派な通貨だった。  いいや、御縁は、立派な財産か。  この縁がとても尊い繋がりで、お金では獲得できない力を与えてくれているのだけは、その時月には、理解できた。  心臓はまだまだ収まらないから、音を聞かれないように、月は大きな声で笑うのだ。  悪くないかもしれない。都内駅前徒歩五分、家賃月々四万円。貧乏神付――。  雲母月の奇妙な東京あやかし生活の幕は、今開いたのだ――。
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